ゲーム理論って何?


「何かゲームに勝てる方法なのか?」そう考えておられる方も多いと思います。管理人も最初そう思い、ゲーム理論に興味をもちました。管理人の場合、もっと言うと「ゲームに勝てるとしたら、ギャンブルにも勝てるのではないか?」と期待していました。しかし勉強してみると、特定のゲームのハウツーのようなものではないことがわかりました。ゲーム理論は社会科学の1つのツールだったのです。

社会における複雑な状況を何でも「ゲーム」とみなし、 個人・企業・国家など「プレーヤー」たちの「戦略」を 数学的に考える。ゲーム理論とは一言で言えばそんな理論です。


★アクセルロッドとゲーム理論

『囚人のジレンマ』の306ページに、ゲーム理論の魅力をよく伝える文章があるので、そのまま抜粋して紹介します。

ゲーム理論の分野にはよくあることだが、アクセルロッドもまた、様々な分野を経験した上でゲーム理論にたどりついた。シカゴ大学では数学を専攻し、モートン・カプランの講座を受講した。友人にすすめられ、R・ダンカン・ルースとハワード・ライファ共著の『ゲームと意志決定』を読んでみたところ、その冒頭の文章に心を奪われた。「人類が残した書物を見ると、利害対立というのが最大の関心事だった。それに匹敵する注目が向けられるのは、神や愛や内面の葛藤といった類のものくらいである」という一文だ。

アクセルロッドはその後エール大学に進み、政治学の博士号を修得した。博士論文のテーマは、ルースとライファが十分に論じえなかったテーマ、利害対立であった。現在アクセルロッドは、ミシガン大学公共政策研究所に所属している。政治学および公共政策教授という肩書にとどまらず、生物学から経済に至る、広くてしかも深い関心を抱いている。


★戦略の科学=協力の科学

『戦略的思考とは何か』のまえがきからポイントをピックアップしました。 最後の5段目が重要です。

・戦略的思考とは、相手がこちらを出し抜こうとしているのを承知したうえで、さらに その上をいく技である。

・戦略的思考の基礎は、いくつかの簡単な法則からなっていて、戦略の科学とでも呼ぶべきものが次第に発達してきた。

・戦略的思考の科学はゲーム理論と呼ばれる。これは比較的新しい学問分野で約50年の歴史しかない。しかしその間すでに多くの実際の戦略に役立ってきた。

(日本語版へのまえがき)

・この本の日本語版を出すことはすでに十分アメリカ経済の脅威となっている日本の競争力を一段と強めることになると考える向きもあるかもしれない。しかし、その見解は悲観的に過ぎよう。ハーバードビジネススクールのマイケル・ポーターによれば、競争は適当な条件の下で、イノベーションや成功を生みだす強力な基盤となりうる。

・一層重要なこととして、ゲーム理論は競争だけでなく協力についても、重要な示唆を与えるものだということを強調しておきたい。たとえば、囚人のジレンマの検討において、どのようにしてお互いに不毛な衝突が避けられ、お互いに有益な協力が達成されるかが示される。日米両国の人々がゲーム理論をよりよく理解し、両国間の実りある協力関係が深まることを願ってやまない。

★ゲーム理論は心理学?

ゲーム理論は、数学者のフォン・ノイマンが2人ゼロサムゲームの基本定理を証明したことに始まる学問です。お互いに影響を与え合う場で自分の利益を追求する行動(戦略)は、本質的に室内ゲームと同じである、という認識から「ゲーム理論」と呼ばれるようになりました。だからゲーム理論は行動科学であり、心理学とはお隣りさんといえるとおもいます。ノイマンは室内ゲームに利害対立の原型があると気付きました。 そして同じような利害対立が、政治、経済、戦争、日常生活においても起こることに気付いたのです。

第2次大戦中、フォン・ノイマンといっしょに仕事をしていたある学者が、 ノイマンにこう言いました。 「つまりチェスのようなゲームの理論ですね。」 ノイマンはこう答えました。 「いやいやチェスはゲームじゃありません。チェスというのは、明確に定義された計算の一形式なのです。実際に答えを出すことはできないかもしれないが、理論的には、どんな状況でも、ある一つの解、つまり「正しい手」が存在するはずです。」

つづけて、 「それに対して本当のゲームというのは全然ちがいます。現実の生活はそういうものではないんです。現実の生活は、はったりや、ちょっとしたごまかしの駆け引きや、こちらの動きを相手はどう読んでいるのだろうかと考えたりすることなどから成っています。そして、これこそが、私の理論で言うゲームなんです。」

はったりや駆け引きと聞くと、ゲーム理論は心理学の一分野と考える人もいるかもしれません。 しかしノイマンの考えたゲーム理論は、れっきとした数学でした。 なぜ人間の行動や、人間の利害の対立を扱うのに、心理学でなく数学なのでしょうか。 それは、ゲーム理論が「完全に合理的なプレーヤー」を想定しているからです。 だから、厳密に数学的な解析ができるのです。

★管理人とゲーム理論

数学や心理学が好きだった管理人にはゲーム理論はうってつけでした。 管理人はパチスロ、麻雀などのギャンブルが好きで、確率論などを一人で勉強していました。そこでゲーム理論と出会います。フォン・ノイマンという、ものすごい科学者が、ポーカーの研究からゲーム理論を発展させたことを知ります。

ポーカーは確率論だけにもとづいてプレーしたのでは勝てません。確率論は自分の手の大きさに応じて、賭け金を決めることをすすめます。しかし、ずっとそういうパターンでやっていれば、大きく賭けてくる時は大きい手、そうでないときは小さい手、と相手に読まれてしまいます。ご存じのように、ポーカーの駆け引きではブラフ(はったり)の使い方が重要です。 じつはここがゲーム理論なのです。

確率論を1階とすれば、ゲーム理論は2階なのです。 麻雀の基本は確率論です。見えている牌から見えない牌を確率的に予想し、捨てる牌を決めていきます。しかし「わざと役牌を鳴かせる」「リーチを掛けずにダマで狙い打つ」といった高度な部分(駆け引き)はゲーム理論なのです。


◆参考文献

  • 『エール大学式ゲーム理論の発想法―戦略的思考とは何か』 
    アビナッシュ・ディキシット、バリー・ネイルバフ、TBSブリタニカ、1991年
    THINKING STRATEGICALLY (1993)

  • 『囚人のジレンマ―フォン・ノイマンとゲームの理論』 
    ウィリアム・パウンドストーン、青土社、1995年 
    PRISONER'S DILEMMA : JON VON NEUMANN, GAME THEORY, AND THE PUZZLE OF THE BOMB (1992)