甘いワナ


「♪ 甘いワナにはまってしまった私 かなりヤバイ状態になってる」。 一度入ってしまったら抜け出せない状況というのがあります。 航空機のマイレージサービスはそのひとつです。 これはある新聞の記事です。

2000/09/10
<航空会社の選び方 3割がマイレージ>
「囲い込み」進む 2年で倍増 旅行誌調査

航空機の利用客の間で、たくさん乗れば無料航空券などがもらえるマイレージサービスによる「囲い込み」が進んでいることが、海外旅行誌エイビーロード(リクルート発行)によるアンケート(回答数4723)で明らかになった。

それによると、航空会社を選択した理由では「マイレージに加入しているから」が30.1%となって初めて3割を超え、トップの「旅行スケジュールに好都合だったから」の30.9%に並んだ。マイレージを理由とした回答は1998年調査の約2倍になった。

マイレージへの加入も、98年調査で半数を超えてからも増え続け、67.9%に達した。マイレージによる特典の利用については、16.4%が「経験あり」と答え、その内容は 1.無料航空券 2.座席の格上げ 3.クーポン券 ― の順となった。航空各社は、自社の便だけでなく、共同運航により他社便でもマイレージの相乗りを進めており、範囲の拡大に努めている。

このような「囲い込み」が進むと、 航空会社の運賃を値下げするインセンティブが弱くなります。 航空業界の価格競争はなくなります。よって 長い目で見ると消費者にとって不利になります。 消費者はいわばトラップにかかったわけです。

ビデオ屋さんでは、10個たまったら1本無料みたいなスタンプカード(ポイントカード)をもらいます。 レコード屋さんでもクリーニング屋さんでもスタンプカードをもらいます。 スタンプカードは、その店で消費しようという誘因になります。 放っておくと、サイフの中は会員カードとスタンプカードでいっぱいになります。

企業はあの手この手で、消費者を「一度入りこむと抜け出せない」状況に追いこもうとします。あらゆるところで「囲い込み」戦略がみられます。 化粧品などの無料サンプルを配るのも同じです。 とにかく引きずり込もうとします。 そしてあとから利益を得ます。 携帯電話や衛星放送の受信セットをタダで配るのも同じです。 (年間契約や高い解約金を強要するのはやりすぎですが。) プレステ2などもそれ自体では利益がありません。 あとからソフトを売って儲けたり、あるいは他のソフト会社からライセンス料 をたくさんもらうわけです。無料パソコンや無料プロバイダーも同じですね。

みなさんも何か抜け出せなくなっているものがあるとおもいます。 構造的な問題だけでなく、そもそも人間は一度習慣が身につくと、なかなか抜け出せないということもあります。 何かから抜け出したり、他のものに切り換えたりすることはコストがかかります。 つまり、いったん「契約」してしまうと、消費者の方は立場的に弱くなるということです。 教訓としては「試してみない」「関係を固定化しない」ということでしょうか。


★新規客を装う

最初は安く、あとは高く。なんでもありです。

2000/09/30
<値引き実験で「二重価格」陳謝>
米アマゾン

米ネット小売り最大手アマゾン・ドット・コムが客に対して、同じ製品をさまざまな価格で売っていたことが判明、客から「だまされた気がする」との怒りの声があがり、同社は28日までに一人あたり約3ドル強(300円余り)を約6900人の客に返し、陳謝した。異なる値引き率に対して客がどのように反応するか調べていたといい、最も安かった値段と実際に支払った分の差額を返した。

ネット販売の競争が激しくなっている米国では、値下げで収益が悪化する業者も出ている。値引きを抑えながら売り上げを増やす営業手法が模索されている。同社は今後も似た実験をした際は、同様に返金をする方針というが、業界関係者からは「お客は疑心暗鬼になり、客離れを招きかねない」との声もあがっている。

同社によると、映画などを鑑賞するDVDソフトの68品目を5日間にわたり、2割から4割の値引き率で売った。運がよければ40%までまけてくれるが、「ついてない客」は20%しか安くならない。この実験は今月上旬に行われた模様だが、ネット上でアマゾンが「二重価格」で売っているとのうわさが飛び交った。「おかしいと思い、新規客を装って再度試したら、より安くなった。得意客には値引き率を抑えているのではないか」などと不審に思う客が相次いだ。

同社は買った客6896人に平均3ドル10セント返金した。「売上高を伸ばす最新のネット商法」との業界関係者の分析もネットに登場したこともあり、アマゾンの得意客の失望を募らせた格好だ。同社のベゾス最高経営責任者(CEO)は27日、「このテストは客に疑念を与えてしまい、間違っていた」との声明を発表した。