カルテルとは、本来競争すべき企業が商品の価格などで協約を結び、競争をしないことです。協定がうまくいくとカルテルは成功で、消費者から搾取することができます。しかし
どの企業も、他の企業を裏切るインセンティブ(誘因)があります。つまり、自分の企業だけ価格を少し下げ、たくさん売りたいというインセンティブです。だからどの企業も裏切り、カルテルは失敗します。
協力すればうまくいくのに、裏切ってしまう。
これはどこかで見たことがありますね。
そうです、囚人のジレンマです。じつは、
カルテルが失敗するとは、「企業が囚人のジレンマにハマってしまう状態」で、
カルテルが成功するとは、「企業が囚人のジレンマにおいて協力ができている状態」だったのです。
カルテルは消費者にとって望ましくありません。なので、消費者はつねに企業を監視していなくてはなりません。しかし、あなたがもし企業の経営者になったとしたら、カルテルを成功させなければいけません。そのときに備えて、カルテルをもっと詳しく見ていきましょう。
カルテルもまた例によって、簡単なゲームで説明できます。
それじゃあまたモームス女子大の中澤ゼミ(9人)に登場してもらいましょう。
とまあ、こんなゲームです。 仮に全員が裏切りに出た場合、全体の損失額は
全員が協力する場合の 9×8500 = 76500 から
全員が裏切る場合の 9×5000 = 45000 を引いて、
31500円になります。 (「1人の裏切りにつき−3500円で、それが9人なのでマイナス31500円」と考えてもよいです。)
ということは、カルテルをうまく行なう方法を考えなくてはいけないのですね。
いったいどうやれば裏切りを防げるのでしょうか。
一般には、裏切り者を見つける方法を考え、そして
裏切り者が罰をうけるようにします。
★談合
日本は競争のない談合社会と言われるので、囚人のジレンマを見つけるのは簡単です。これはとくに絵に描いたような囚人のジレンマです。
2000/09/29
<農協にコメ談合のススメ?>
一部産地の売り急ぎに喝 高木・農水事務次官
「コメ対策を苦労して作ったのに、『なにをかいわんや』だ」。28日の記者会見で高木勇樹・農水事務次官は全国農業協同組合連合会(全農)などを批判した。コメ価格の下落が続くなか、政府は同日、緊急対策を打ち出したが、価格下落の一因が一部農協の売り急ぎによる安値販売にあるとの指摘があったためで、「親分役」の全農や全国農業協同組合中央会(全中)のリーダーシップのなさが我慢ならなかったようだ。
コメ取引の多くを占める自主流通米の入札では、各都道府県の農協団体(経済連)などの売り手が、銘柄別に希望価格を示し、それをもとに取引が行われる。今年産米コメ余りが予想されたため、一部の経済連が売れ残りを懸念。自分のコメを早く売りさばくため、昨年産より大幅に希望価格を下げた結果、値崩れを加速したという。
高木次官は「自分の産地のことだけ考えて全体の足並みを考えずに行動しているところがある。中央団体(全農や全中)があるわけだから、売り方について統一的な戦略があってしかるべきだ」。「談合のすすめ」と受けとられかねない発言だったが、全農と全中は28日夕になって急きょ、「JAグループが一致団結して」「組織をあげて計画的な販売と価格の回復に努める」とする記者発表文を公表した。
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★競争を避ける
ある新聞記事です。7社で協定を結んで、回収料金を高く維持しようとしています。
「消費者の混乱を避けるため」などとありますが、消費者にとっては不利です。
環境にもやさしくありません。
回収料金が高ければ、リサイクルなどせず粗大ゴミとして捨てようというインセンティブが高まります。
2000/09/06
<家電リサイクル料、松下に同調>
東芝が公表 料金の設定自由だが・・・ 各社、同水準で決着か
東芝は5日、来年4月施行の家電リサイクル法でメーカーに回収が義務づけられた使用済み家電製品4項目について、引き取りの際に消費者に請求する「再商品化等料金」を決めた。
冷蔵庫4600円、エアコン3500円など、業界最大手の松下電器産業が4日に公表した金額と同じ。引き取り金は各メーカーが独自に設定する計画だが、回収に必要な全国ネットワークを松下と共通化する東芝は、消費者の混乱を避けるため負担額をそろえた。
東芝の引き取り料金はほかの2品目についても、洗濯機2400円、テレビ2700円と、松下と同額に決まった。
家電リサイクルに伴う回収網については、「松下−東芝」と「シャープ−日立製作所−三菱電機−ソニー」の5社連合の大きく2陣営に分かれ、共同で廃家電の引き取り場所や物流網の整備を進めている。
引き取り料金の設定は各社の判断に任せられ、処理コストとの兼ね合いで決まる建前だが、5社連合の料金設定も「松下や東芝の料金を意識せざるを得ない」と、同水準で決着する、との見方が強まっている。
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◆参考文献
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