囚人のジレンマの教訓


囚人のジレンマは、「個人が勝手な行動をとるとグループの利益にならない」ことを示しています。個人が、自分の利益を最大にしようとして行動すると、グループとしては望ましくない結果になります。協力できれば、あるいは協力していれば、望ましい結果が得られるのです。

囚人のジレンマはどこにでも見られます。「囚人のジレンマを見つけることは空気を見つけるようなものだ」と言った人もいます。みなさんのまわりにもいろんな囚人のジレンマが存在しています。

たとえば小学校のクラスで生徒みんなが自分勝手な行動をすると、クラスという組織が成り立たなくなってしまいます。放っておいたら混乱するのは当然なので、教師がきちんと統制しなければいけません。

小学校のクラスマッチでソフトボールをします。教師は眺めているだけで、監督はいません。生徒は送りバントが必要な場面で三振してしまいます。自分だけいいかっこをしたいのでつい大振りするのです。自分の活躍が大事で、チームの勝利は二の次なのです。クラスは負けてしまいます。

プロ野球では犠打を狙うインセンティブ(誘因・理由)が設定されています。年俸の査定のときに、犠打も高く評価するということであれば、チームバッティングに徹するインセンティブになります。協力するためのインセンティブをつくることが重要なのです。

囚人のジレンマは「国家と個人」にまで適用できます。

ホッブズは「無制限の私利の追求はカオスを引き起こす。だから秩序をもたらすには強い政府が必要である」と言いました。グループに属する個人が私利によって動機付けられるとします。その場合、グループが生き残るには、個人の私利をグループの利益と一致させる方法を見つけなければなりません。これはあらゆる組織にとって大問題です。これを解決する方法は2つあります。1つはトップによる規制と計画(社会主義)であり、もう1つは私有財産と市場(資本主義)です。すなわち統制かインセンティブかです。

「囚人のジレンマ」は社会科学の古典問題でもあり、多くの研究者が頭を悩ませてきました。「囚人のジレンマ」はゲーム理論の核心ともいえます。


ホッブズ(Thomas Hobbes) BRITANNICA
イギリスの哲学者(1588-1679)。清教徒革命のさなか、主著「リバイアサン」を書き、社会契約説の先駆をなした。「人間の置かれている状態は、、、各人の各人に対する闘争の状態である。」

社会契約説
自由で平等な個人が、お互いに安全で平和な生活を送るために相互に契約を結んで、国家を形成するという考え方。社会契約は具体的には法律という形をとる。


◆参考サイト
CyberEconomics
http://ingrimayne.saintjoe.edu/econ/