バッターは球種を読もうとします。前の打席ではカーブを狙いヒットを打ちました。
そこでバッターはこう考えます。「相手は前の打席でカーブを打たれたのでもう投げないだろう。だからストレートを待とう」。しかし投手はこう考えます。「相手は、今度はカーブでなくストレートを狙ってくるだろう。だからカーブを投げよう」。しかしバッターは投手のこの考え方を読み、カーブに待ちを変えます。そして投手は、それを読みストレートを投げようとします・・・・。堂々巡りになります。じゃんけんと同じですね。
打者も投手も何を待てば、何を投げればよいかわかりません。
運よく成功したほうは「ウラをかいた」といい、失敗したほうは「ウラをかかれた」といいます。
ピッチャーの配球がワンパターンだったとしましょう。
するとバッターはそれを利用し、有利に勝負ができます。
同じようにバッターの読みがワンパターンだったとしましょう。
ピッチャーはそれを利用し、有利に勝負ができます。
以上のように考えていくと、予測できない行動をとるのが意味のある指針になる
ということがいえるとおもいます。
テレビゲームの野球を考えましょう。
あなたがコントロールするピッチャーはストレートとカーブの2種類の球種しかありません。ミックス戦略が、ストレートとカーブを7:3で(ただし無作為・でたらめに)投げろと教えたとしましょう。あなたは秒まで表示するデジタルの腕時計をみればよいです。
そして、秒表示が0〜41ならストレート、42〜59ならカーブを投げればよいです。
(投球のテンポが速い場合は秒の下1桁が3、6、9ならカーブ、それ以外ならストレートなどとします。)
★偶然を利用する
ミックス戦略はランダム化戦略でもあります。つまり偶然を利用するわけです。
じつはこの「偶然を利用する」という方法が、確率論との接点なのです。
そこで本サイトでは確率論をゲーム理論の基礎と位置付け、重視しています。
ギャンブルをする人は偶然に翻弄されます。これは言いかえれば、自然が人間を翻弄しているわけです。偶然を使う自然というプレーヤーが人間を翻弄するわけです。つまり自然はランダム戦略を使ってくるので手強く、だったら私たちもそれを真似すればいいということですね。
ランダム化戦略はいたるところで見られます。MP3をランダム演奏で聴くのもそうですし、パスワードをランダムに作るソフトもそうです。
確率は戦略のひとつなのです。
そして、ギャンブルの研究とは、確率を使う自然というプレーヤーの戦略を研究することにほかなりません。
★アソボウズ 2000年9月
プロ野球データの配信で有名なアソボウズ。ベンチャーに関する特集で記事が出ていたので紹介します。
2000/09/10
<変わる起業、人材集う>
ID野球、ネット配信
「(巨人の)松井を攻めるなら内角低めにフォークだな」「レフトはもっと深く守らないと。松井は(ヤクルトの)石井の球をよくそっちに打つんだから」
テレビで巨人−ヤクルト戦を見ながら、インターネットで情報を取り出して、仲間や家族でこんな会話を交わすこともできる。
プロ野球関係者などにスコアデータの提供サービスをしてきた「アソボウズ」(本社・東京)は、国内最大のインターネット検索サービス「Yahoo!(ヤフー)」への提供を始め、ヤフーは今シーズンからリアルタイムでプロ野球データの配信をしている。試合のある時間帯を中心にアクセスは一日二百数十万件に達し、ヤフーで最も利用されているサービスになった。
アソボウズ代表の片山宗臣さん(54)は歌舞伎のかつら職人だったが、趣味のゴルフの腕を上げようと、スイングのフォームを画像解析するシステムを作り、さらに1994年には20歳代の元球児やエンジニアらと野球のデータ解析システム「スコアメーカー」を開発した。蓄積したプロ野球のスコアデータを分析し、「イチローは2−3から内角低めの直球なら、何割の確率で見送る」などと選手のクセや弱点を見抜いた。
アソボウズが持つデータの価値はスポーツ関係者の間に口コミで広がっていった。わずか社員15,6人のアソボウズに、球団関係者からの問い合わせが相次ぎ、96年のシーズンまでに、ロッテや巨人、ヤクルトなど8球団が採用した。
「うちの中内(功)にお会いいただきたいのですが」。97年の暮れには当時低迷していたダイエーの中内オーナーから直々に声がかかった。
当初は顧客が極めて限られていた情報が、インターネットという技術で、一気に市場を拡大し、さらに新しいサービスも生み出そうとしている。
データ放送やインターネットとの融合が可能なBSデジタル放送や次期CS放送をにらみ、NHKや在京民放、日本アイ・ビー・エム(IBM)、電通などの大手広告代理店など大手企業とも提携の話が進むようになった。対象も米大リーグ、野球だけでなく2002年ワールドカップ(W杯)…と、片山さんの夢は膨らんでいる。
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ASOBOU'S
http://www.asobous.co.jp/
★サッカーのかけひき 2001年6月
コンフェデレーションズカップ、日本対カナダ戦。日本は3-0でカナダに快勝しました。
後半12分、小野のフリーキックで先制し、けっきょくこれが決勝点となりました。
この試合では、フリーキックを誰が蹴るか決める際、中田英と小野が
口でじゃんけんしていたことが話題になりました。日刊スポーツの記事です。
2001/06/01
<先制芸術FK小野 復活!!229日ぶり代表ゴール>
ゴールまで20メートル、ほぼ正面。小野の得意エリアだ。右足を振り抜いた。平均身長183センチのカナダ選手6人の上を超え、ゴール左に突き刺さった。打った瞬間に先制点を確信し、右手を突き上げた。「うまくゴールに入ってよかった。自分が蹴れてよかった」とはにかむように振り返った。テレビ解説のアーセナルのベンゲル監督も「壁がゴールに近かったので、巻いて入れるのは並大抵のことではない」と絶賛した。
キッカーは中田英と決めた。しかもジャンケンだ。手だと相手に知られてしまうので、とっさに口でやった。中田英はチョキ、小野がグーだった。「練習でもあの距離は決めていたので自信はあった」。実は前日(5月30日)の練習後に「チャンスをもらったら、むやみではいけないけど、枠に飛ばすシュートを打ちたい」とゴール奪取を宣言していた。有言実行の一発だった。
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★中田英寿「戦略的思考とは何か」再び 2001年6月
コンフェデレーションズカップ準決勝、日本対オーストラリア戦。日本は1-0でオーストラリアを下し、決勝進出を決めました。前半43分、強い雨の中、中田英のフリーキックで先制し、けっきょくこれが決勝点となりました。
日経の記事です。
2001/06/08
<中田英、豪雨裂くFK>
FKのキッカーを決めるのに、カナダ戦のような「口じゃんけん」はしなかった。「雨という状況を第一に考えた。相手が壁の上を越す球に対応しようとしていたのもわかったし。強いシュートなら僕が打った方がいい」。43分、小野と相談する前に、中田英は自分がけると決めた。
右足から放たれた球は、相手の意表を突く、低い剛速球だった。壁の間を抜けて、ゴール手前で待つ敵DFの足も吹っ飛ばし、ゴールへ。肉体的な強さと観察眼の鋭さが凝縮された得点。押され気味だった試合の流れを一変させた。
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◆参考文献
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