階段じゃんけん


小学生のころ、階段じゃんけんをやりました。 自分が大物狙いでパーにこだわると、相手はチョキを出すようになります。そして、自分は、相手がチョキばかり出すことに気付いて、こんどはグーを出そうとします。するとこんどは相手がパーを出し・・・と堂々巡りになります。ゲーム理論は、このゲームに関して、きわめてクリアーな解答を与えます。このゲームには負けない方法があるのです。それでは見てみましょう。

いま2人でやる階段じゃんけんを考えます。グーで1段、チョキで2段、パーで5段とします。 プレーヤー(自分、相手)の利得は下の表のようになります。

それではこのゲームの戦略を考えます。

まず、自分が
グーを出す確率を p
チョキを出す確率を q
パーを出す確率を 1-p-q
とします。

すると期待値の考え方から、
相手の期待利得は

グーを出すと: 0p+1q-5(1-p-q)
チョキを出すと: -1p+0q+2(1-p-q)
パーを出すと: 5p-2q+0(1-p-q)

になります。

では、自分が負けないためにはどうすればよいでしょうか?「相手がどんな手を出してきても負けない」というのは、すなわち「相手は何を出しても期待利得が0になる」ということです。 だから、上の3式をすべて0にするような p,q の値を見つければよいことになります。よって、

0p+1q-5(1-p-q)=0
-1p+0q+2(1-p-q)=0
5p-2q+0(1-p-q)=0

この連立方程式を解くと、

p=1/4
q=5/8
1-p-q=1/8

相手が何を出そうと、自分がこの確率(グー:チョキ:パー=2:5:1)で出せば、相手の期待利得は等しく 0 になります。

だから、 ある戦略をとることにより、相手の利得を 0 にすることができる。つまり、負けない。 ということです。

このような点は一種の定点といえます。ゲーム理論ではこのような点のことを均衡点といいます。 また、このような点を「ゲームの解」ともいい、以上のような過程を「ゲームの解を求める」といいます。

このゲームは対称形のゼロサムゲームです。つまりお互い対等の条件にあります。 よってこの自分にとって最善のミックスは、相手にとっても最善のミックスになります。つまり相手も、グー:チョキ:パー=2:5:1の割合で出せばよいのです。この均衡においては、自分も相手も期待利得はゼロです。そして、このような期待利得ゼロの均衡は、対称形をしているゼロサムゲームでは、必ず成立します。


◆参考文献

  • 『エール大学式ゲーム理論の発想法―戦略的思考とは何か』 
    アビナッシュ・ディキシット、バリー・ネイルバフ、TBSブリタニカ、1991年
    THINKING STRATEGICALLY (1993)