オークション


今回は簡単なオークションのモデルを考えます。

いま、リカとマリがあるお宝チケットのオークションに参加しています。 参加者はこの2人だけです。 リカはこのチケットに5万4000円まで払っていいと考えていて、 マリは3万4000円まで払っていいと考えています。 そしてお互いにこのことを知っています。

リカ VS マリ

このオークションは封印入札方式で、一番高い入札をしたプレーヤーが落札するというルールです。つまり封筒に価格を書いた紙を入れ、それを主催者に渡します。そして高い価格をつけていたほうが落札します。なお、入札価格は1万円以上、1万円単位で、同じ価格をつけた場合はコイントスで勝者を決めます。

さて、このオークションはどういう結果になるでしょう。


まずはリカの頭の中をのぞいてみましょう。

リカ < 矢口さんの評価額は3万4000円。だから3万円まで出してくる。じゃあわたしは4万円をつけるのがよいかなあ。でも矢口さんが1万円しかつけてこなかったらどうしよう。落札はできるけど、ずいぶん損することになるわ。でも矢口さんが1万円しかつけないなんてことはあるのかしら・・・。

かなり混乱しているようです。

じつはこれは入札価格を戦略とする同時進行ゲームです。

まず、このゲームの利得は、

もしリカが Br 円で落札したとすると、リカの利得は 54000 - Br 円、
もしマリが Bm 円で落札したとすると、マリの利得は 34000 - Bm 円

と考えます。 (これはミクロ経済学の「余剰」の考え方です。たとえばリカが4万円で落札したとすると、もともと5万4000円払ってもいいと考えていたのですから、1万4000円トクしたと考えます。安く落としたほうが利得が高くなります。) またオークションに負けた場合の利得はともに0円と考えます。

リカの戦略は、1万円、2万円、3万円、4万円、5万円、6万円、・・・・、
マリの戦略は、1万円、2万円、3万円、4万円、5万円、6万円、・・・・です。

リカの戦略について考えます。 すると、リカが6万円以上をつけるというのは考えなくてよいことがわかります。 なぜなら、1万円〜5万円という戦略をとるとき、もし落札できたとすると利得はプラスで、落札できなくても利得はゼロです。ところが6万円以上をつけたとき、もし落札できたとしても利得はマイナス、落札できなければ利得はゼロです。 そこでリカが6万円以上をつけるというのは考慮から外すことができます。 マリについても同様に考えて、4万円以上をつけることは考慮から外すことができます。

そこでこのゲームは下のようなテーブルで表現できます。各マスの中には期待利得が記入されています。たとえば左上のマスでは、引き分けなので、リカの期待利得は (5.4-1)*(1/2) + 0(1/2) = 2.2 、マリの期待利得は (3.4-1)*(1/2) + 0(1/2) = 1.2 となっています。

マリ
リカ

するとこのゲームにはナッシュ均衡が1つだけあることがわかります。

マリ
リカ


◆参考文献

  • GAME THEORY WITH ECONOMIC APPLICATIONS 
    Scott Bierman, Luis Fernandez, Addison-Wesley, 1998