脅しの信憑性


「近づいたら爆弾を爆発させるぞ!」。犯人が警察を脅します。しかしこれは信憑性のある脅しではありません。というのは本当に爆発させると自分まで吹っ飛んでしまうからです。ゲームはつぎのように表現できます。

下の図を見てください。後ろ向きに解いていきます。最後に動くのは犯人です。犯人は「爆発させない」を選びます(利得-100と利得-50を比較する)。ゲームの最後の流れは青い線で決まります。 すると警察は「近づく」を選ぶと利得は50、「近づかない」を選ぶと利得は-50なので「近づく」を選びます。これが緑色の線です。けっきょくゲームは「近づく→爆発させない」をたどります。


最近は規制緩和で新規参入のある産業が多いです。既存企業が「参入してきたら価格攻撃するぞ!」と参入企業を脅します。これは警察と犯人のゲームと同じように考えることができます。

いま既存企業の独占利益を100とします。 価格を切り下げて攻撃した場合、利益は0になるとします。また参入費用を10とし、共存のときは利益は等分されるとします。ゲームはつぎのように表現できます。

下の図を見てください。部分ゲーム完全均衡を求めます。最後に動くのは既存企業です。既存企業は「攻撃しない」を選びます(利得0と利得50を比較する)。ゲームの最後の流れは青い線で決まります。 すると参入企業は「参入する」を選ぶと利得は40、「参入しない」を選ぶと利得は0なので「参入する」を選びます。これが緑色の線です。けっきょくゲームは「参入する→攻撃しない」をたどります。

したがって「価格攻撃するぞ!」という脅しには信憑性がないことになります。


◆参考文献

  • 『入門ミクロ経済学』  
    井堀利宏、新世社、1996年

  • 『ゲームと情報の経済分析』 
    エリック・ラスムセン、九州大学出版会、1990年 
    GAMES AND INFORMATION : AN INTRODUCTION TO GAME THEORY (1989)