有限繰り返しゲーム  


「おうむ返し」 「アクセルロッドの実験」で見た「繰り返し型囚人のジレンマ」を再び考えます。 これらの話のポイントは、1回限りの囚人のジレンマでは (協調, 協調) は達成されないけれど、何回も繰り返すときは報復の脅威、将来への配慮などから (協調, 協調) が達成される可能性があるということでした。

ヒトミ
マキ

いま囚人のジレンマを有限回繰り返すゲームを考えます。 マキの戦略を考えましょう。 ゲーム理論のポイントは先読みでした。ゲームの最終段階から考えてみましょう。 最後のゲームでは、マキは協調する理由があるでしょうか。 これはないとおもいます。 なぜなら将来へ配慮する必要がないからです。 報復の脅威は存在しません。 これは1回きりの囚人のジレンマと同じなので、マキは裏切ります。 同様にヒトミも裏切ります。よって最後のゲームは (裏切り, 裏切り) ということになります。

最後のゲームがどうなるかはわかったので、 最後から2番目のゲームを考えましょう。 マキの戦略を考えます。 このゲームでマキは協調する理由があるでしょうか。 これはないとおもいます。 なぜなら将来へ配慮する必要がないからです。 というのは、最後のゲームは (裏切り, 裏切り) に決定しているからです。 だからここで協調する理由は何もないのです。ヒトミも同じです。 よって最後から2番目のゲームは (裏切り, 裏切り) ということになります。

最後のゲームと最後から2番目のゲームがどうなるかはわかったので、 最後から3番目のゲームを考えましょう。 マキの戦略を考えます。 このゲームでマキは協調する理由があるでしょうか。 これはないとおもいます。 なぜなら将来へ配慮する必要がないからです。 というのは、最後のゲームも最後から2番目のゲームも (裏切り, 裏切り) に決定しているからです。 だからここで協調する理由は何もないのです。ヒトミも同じです。 よって最後から3番目のゲームは (裏切り, 裏切り) ということになります。

この議論は延々と繰り返すことができます。けっきょく 有限回の繰り返しゲームでは、すべてのゲームで (裏切り, 裏切り) ということになります。 でもこの結論は納得しがたいですね。これは 「逆向き帰納法のパラドックス」といわれます。 たしかショムニのゲームは有限回でした。 でも合理的なことで定評のある梅ですらこんなことは考えませんでした。 このパラドックスはゲーム理論の1つの問題点を示しています。


◆参考文献

  • FUN AND GAMES : A TEXT ON GAME THEORY 
    Ken Binmore, D. C. Heath & Company, 1992 

  • 『入門ミクロ経済学』  
    井堀利宏、新世社、1996年