いま、あるマーケットはセクシー社によって支配されています。
そこへチャーミー社が新規参入を狙っています。
セクシー VS チャーミー
このゲームは、セクシーが自社のプラントを拡大するかしないかを決め、同時に、チャーミーがこのマーケットへホイッ!と参入するか、あるいはフェイドアウトするかを決めるゲームです。
セクシーは、プラントの拡大によって今よりずっと低いコストで生産することができます。
そういうわけで、チャーミーにとっては、セクシーがプラントを拡大しないほうが望ましいです。
さて、このゲームの問題は、セクシーは自社のプラントを拡大するコストがいくらなのかわかっているのに対し、チャーミーはそれが3億なのかゼロなのかはっきりしないということです。
情報の非対称性があるのですね。
じっさい、セクシーとチャーミーは下のいずれかのゲームをやっています。
そして、セクシーはどっちのゲームをやっているかわかっているけれども、チャーミーはわからないのです。
セクシーのコストが高い場合
セクシーのコストが低い場合
テーブルを見ると、プラント拡大のコストが高い場合は、セクシーは拡大しないので、チャーミーは参入したほうがよいことがわかります。いっぽう、プラント拡大のコストが低い場合は、セクシーは拡大するので、チャーミーはフェイドアウトしたほうがよいことがわかります。上と下でやることが異なってくるのですね。
そこでチャーミーの頭の中をのぞいてみましょう。
< いったいわたしはどっちのゲームをやっているんだろう・・・。困ったわ
このゲームはいったいどういう結果になるでしょう。
いまチャーミーが、上のゲームである確率を p1 、下のゲームである確率を 1-p1 と考えたとします。
コストが高い場合 p1
コストが低い場合 1-p1
(ここで、上のテーブルではセクシーの Don't Expand は支配戦略で、
また下のテーブルではセクシーの Expand は支配戦略であることに注意してください。)
すると、参入したときは、
確率 p1 で 1 (上のゲームをやっていた場合)
確率 1-p1 で -1 (下のゲームをやっていた場合)
になるので、期待値は
1p1 + (-1)(1-p1) = 2p1-1
になります。
フェイドアウトしたときは、
確率 p1 で 0 (上のゲームをやっていた場合)
確率 1-p1 で 0 (下のゲームをやっていた場合)
になるので、期待値は
0p1 + 0(1-p1) = 0
になります。
そこで、 2p1-1 > 0 、 すなわち p1 > 1/2 ならば参入し、
2p1-1 < 0 、すなわち p1 < 1/2 ならば参入しないほうがよいことになります。
チャーミーが上のゲームの確率が高いと思ったなら、ポジティブに参入するだろうということになり、下のゲームの確率が高いと思ったなら、ネガティブにフェイドアウトするだろうということになります。
◆参考文献
- GAME THEORY
Drew Fudenberg, Jean Tirole, MIT Press, 1991
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