ザ・ネゴシエイター


"You're breaking my balls." エリック・カートマンはやり手の交渉人としても知られます。 サウスパークのファンなら誰でもエリックが「ザ・ネゴシエイター」であることを認めるでしょう。 では何が彼をやり手の交渉人たらしめているのでしょうか。

交渉ゲームというのは結局のところ「お互いが思っているようなあたり」で落ち着くはずです。いまカートマンがカイルにある物を売ろうとしているとしましょう。 カートマンのこの品に対する評価額は50ドルで、カイルの評価額は100ドルです。

交渉は50ドルから100ドルの間のどの価格でも成立します。 ところがいまカイルは何らかの理由で「カートマンは90ドル以上でないとぜったい受け入れない」と信じているとしましょう。そしてカートマンもカイルがそう信じていることを知っているとします。このとき交渉は90ドル以上でまとまるでしょう。

これは交渉の結果が「ゲームが始まる前のお互いの予想」に決定的に依存しているということを意味します。ここから交渉に関する問題は「お互いの事前の予想」に関する問題に置き換えられるということがわかります。

では一人の交渉人のパワーとテクニックというのはいったい何でしょうか。 それは「相手の予想をいかに変えさせるか」ということです。


◆参考文献

  • THINKING STRATEGICALLY 
    Avinash K. Dixit, Barry J. Nalebuff, W. W. Norton & Company, 1993

  • 『経営戦略のゲーム理論―交渉・契約・入札の戦略分析』 
    ジョン・マクミラン、有斐閣、1995年 
    GAMES, STRATEGIES, & MANAGERS (1992)