代替機会


一人の交渉人のパワーとテクニックとは、いかに相手の予想を変えさせるかということです。相手の予想を変えるものとして主に「遅延費用」「代替機会」「コミットメント」の3つが考えられます。

2. 代替機会

再びカートマンとカイルの交渉を考えます。 カートマンはカイルにある物を売ろうとしています。 カートマンのこの品に対する評価額は50ドルで、カイルの評価額は100ドルです。

いまもしカートマンがこの品を90ドルで買ってくれる第三者を知っているとしましょう。 するとカートマンはカイルにこの品を90ドル未満で売る理由はないです。 カイルも、もしこのことを知っていれば、カートマンが90ドル未満で取引することはないと確実に予想できます。カイルは90ドル未満でゴネたりしないでしょう。 交渉は90ドル以上でまとまるはずです。

この場合「代替機会」をもっていることがカートマンの強さになっています。 「代替機会」がカイルの予想を変えさせます。 これは多くのチームから声がかかっているFA選手が各チームとの交渉で強い立場に立てるのと同じです。

代替機会は交渉人のパワーになります。 またここからテクニックとして、交渉の前に代替機会をできるだけ改善しておくという考え方が生まれてきます。


◆参考文献

  • THINKING STRATEGICALLY 
    Avinash K. Dixit, Barry J. Nalebuff, W. W. Norton & Company, 1993

  • 『経営戦略のゲーム理論―交渉・契約・入札の戦略分析』 
    ジョン・マクミラン、有斐閣、1995年 
    GAMES, STRATEGIES, & MANAGERS (1992)