対モラルハザード


前回の経営者と従業員のゲームを再び考えましょう。

経営者の「あるインセンティブ・スキーム」に対する従業員の最適反応を考えます。

いま従業員が頑張るときの期待利得は

0.6(Wg-C)+0.3(Wm-C)+0.1(Wb-C) = 0.6Wg+0.3Wm+0.1Wb-C

従業員が怠けるときの期待利得は

0.1(Wg-c)+0.3(Wm-c)+0.6(Wb-c) = 0.1Wg+0.3Wm+0.6Wb-c

です。

したがって従業員が頑張るのは

0.6Wg+0.3Wm+0.1Wb-C > 0.1Wg+0.3Wm+0.6Wb-c

のときになります。

式を変形すると

0.5Wg-0.5Wb > C-c

Wg-Wb > 2(C-c)

この式は何を意味するでしょうか。 それは「業績が良いときの賃金と悪いときの賃金は十分な格差がなければならない」 ということです。(→格差がないと前回見たように従業員が怠けてしまう。) もっと具体的にいえば「会社の業績が良いときにはボーナスを出さなければならない」ということです。


◆参考文献

  • A COURSE IN MICROECONOMIC THEORY 
    David M. Kreps, Princeton Univ Pr, 1990 

  • STRATEGIES AND GAMES : THEORY AND PRACTICE 
    Prajit K. Dutta, MIT Press, 1999