凸、有界、閉、コンパクト


定理
1変数の関数を定義域 [0, 1] で考える。 もし値域が [0, 1] に含まれ、かつ関数が連続ならば、 関数は必ず不動点をもつ。

 

この [0, 1] は必ずしも [0, 1] じゃなくてよいです。 たとえば [0, 2] にかえても定理は成り立ちます。 これは目盛りをかえればいいだけなので自明でしょう。

定理
1変数の関数を定義域 [a, b] で考える。 もし値域が [a, b] に含まれ、かつ関数が連続ならば、 関数は必ず不動点をもつ。

しかし [0, 1] を [0, 1) にかえると成り立たなくなります。 [0, 1) とは0以上1未満の実数の集合です。 (ここで [0, 1] のような集合を閉区間というのに対し、 [0, 1) のような集合を(半)開区間といいます。)

これはたとえば y=0.5x+0.5 で考えるとわかります。

 

[0, 1] なら x=1 で不動点をもつのですが、 x=1 が定義域に含まれないので不動点をもたないのです。

同様なことが (0, 1] や (0, 1) でも言えます。

また定義域が分断していたり、無限区間だったりしてもいけません。 これは下のような図をイメージすればわかります。

  

定義域が分断してないということは、数学では凸(とつ)という言葉で言い表されます。つまり定義域のどの2点をとってきても、それらを結ぶ線分が定義域に含まれる とき、定義域は凸であるといいます。たとえば [0, 1] は凸ですが、上の図(左)のように分断している場合は凸ではありません。また区間に限りがあるということは、数学では有界と表現されます。上の図(右)の定義域は有界ではありません。

以上をまとめると [a, b] のような区間(集合)は、有界であるといいます。また有界かつ閉のものをコンパクトといいます。

そこで一般的には

定理
1変数の関数をコンパクト凸な定義域で考える。 もし値域が定義域と同じ集合に含まれ、かつ関数が連続ならば、 関数は必ず不動点をもつ。

というふうに書けるのです。


◆参考文献

  • STRATEGIES AND GAMES : THEORY AND PRACTICE 
    Prajit K. Dutta, MIT Press, 1999 

  • 『入門 ゲーム理論―戦略的思考の科学』 
    佐々木 宏夫、日本評論社、2003年

  • MICROECONOMIC THEORY 
    Andreu Mas-Colell, Michael D. Whinston, Jerry R. Green, Oxford University Press, 1995 

  • GAME THEORY : ANALYSIS OF CONFLICT 
    Roger B. Myerson, Harvard Univ Pr, 1991