デッドウェイト・ロス


ふたたびキャンディーの取引を考えます。今回は先に紹介したデッドウェイト・ロスの正体について探ります。

いま課税前のパイの大きさ(社会的余剰)は2000ドルです。 これは消費者余剰1600ドル、生産者余剰400ドルから成ります。

「Taxation 2」で求めたように、 社会的余剰は課税後(方法1でも方法2でも)1620ドルになります。 政府の収入は360ドルになります。デッドウェイト・ロスは 2000-(1620+360) = 20ドルになります。


方法1を考えます。

方法1: 消費者に課税したケース。1.4は消費者にとっての価格(0.9+0.5)。 0.9は生産者にとっての価格(市場価格)。

消費者余剰は需要曲線と価格ではさまれた部分でした。 この場合、価格は消費者にとっての価格 0.9+0.5=1.4になります。 したがって消費者余剰は下のグラフの水色の部分になります。 ここで注意してほしいのが、 需要曲線というのは元の需要曲線(限界評価曲線)ということです。 ここはいまいちど消費者余剰の意味(どれだけおいしいおもいをしたか)を考えてもらえればわかるとおもいます。

生産者余剰は供給曲線と価格ではさまれた部分でした。 したがって生産者余剰は桃色の部分になります。

政府の収入は 0.5*720 = 360 で ちょうどグラフの緑色の部分になります。

さてもとのグラフと比べたとき、 色が塗られていないところがあります。 小さな三角形ですね。 これがデッドウェイト・ロスです。 課税によりこの分だけパイが縮小しているのです。 (全体のパイ(社会的余剰)には政府の収入も含まれます。)

キャンディー市場は (p, q)=(1, 800) で最適に調整されていたのに (p, q)=(0.9, 720) が均衡になりました。 ここで「価格が安くなったからめでたい」と考えるのは最悪の誤りです。 それなら0.5ドルでなく4.5ドルを課税すれば ずっと安くなります。 ポイントは本来取引されるはずだったもの、取引されるべきだったものが 取引されなかったことにあります。 具体的にいえば、いまキャンディー1単位を1.05ドルと評価していた人と キャンディー1単位を0.95ドルで生産できた人がいたとしましょう。 この2人は本来マーケットに行ってそれぞれ 0.05ドルのパイを持ち帰っていたはずです。 でも課税によりこの2人はマーケットに行こうとは思わなくなりました。 これがデッドウェイト・ロスの正体であり 課税の実質的なコストなのです。


念のために方法2の場合のグラフをかいておきます。

方法2: 生産者に課税したケース。1.4は消費者にとっての価格(市場価格)。 0.9は生産者にとっての価格(1.4-0.5)。

注:生産者余剰は元の供給曲線(限界費用曲線)と生産者にとっての価格(0.9ドル)で挟まれた部分。


◆参考文献
Steven E. Landsburg, PRICE THEORY AND APPLICATIONS