今回はデッドウェイト・ロスについての補足です。
補足1
前回はデッドウェイト・ロスが課税のせいで消えた取引であることを見ました。
では取引をしていた人たちはどうなったでしょう。
方法1(消費者に課税)を考えます。
まずはあいぼん です。
あいぼんは1単位につき 0.9+0.5=1.4ドルを払うことになりました。
1.4ドルがあいぼんにとっての実際の価格(コスト)です。
そこであいぼんの得たパイは下のように小さくなりました。
計算すると 2.6+1.6+0.6=4.8 ドルです。
課税前は 3+2+1=6 ドルでした。
つぎにののたん です。
ののたんは市場価格0.9ドルを見て3単位作りました。
1単位目で0.9-0.5=0.4ドル、2単位目で0.9-0.7=0.2ドル、
3単位目で0.9-0.9=0ドルのパイを得ました。
合計0.6ドルです。
課税前は 0.5+0.3+0.1=0.9 ドルでした。
方法2(生産者に課税)を考えます。
まずはあいぼんです。
あいぼんは市場価格1.4ドルを見て3単位購入しました。
1単位目で4-1.4=2.6ドル、2単位目で3-1.4=1.6ドル、
3単位目で2-1.4=0.6ドルのパイを得ました。
合計4.8ドルです。
課税前は 3+2+1=6 ドルでした。
つぎにののたんです。
ののたんは1単位につき0.5ドルを政府に払うことになりました。
ののたんにとっての実際の価格は1.4-0.5=0.9ドルです。
1単位目で0.9-0.5=0.4ドル、2単位目で0.9-0.7=0.2ドル、
3単位目で0.9-0.9=0ドルのパイを得ました。
合計0.6ドルです。
課税前は 0.5+0.3+0.1=0.9 ドルでした。
以上のように個人で見ても、
消費者と生産者の負担は
課税方法と無関係であることがわかります。
補足2
課税によって本来取引されるはずだったもの、取引されるべきだったものが取引されなかったことがデッドウェイト・ロスの正体であることを見ました。
これはいいかえれば過少生産であるということです。
このことはもとのマーケットで過少生産だった場合を考えれば
わかりやすいです。(下図。)
いま720単位が生産されているとしましょう。
これは過少生産です。
なぜなら需要曲線はマーケットの限界評価を、供給曲線は
マーケットの限界費用を表しています。
社会的には評価(価値)がコストを上回る限り生産することが望ましいです。
したがって
721単位目から800単位目までを生産しないことは非効率です。
課税では結果的にこれと同じことが起きているのです。
なおここでマーケットの限界評価と限界費用が一致するところでパイが最大化される
ということは重要です。
つまりマーケットの限界評価曲線と限界費用曲線が交わるところで
パイは最大化されます。
限界評価曲線は需要曲線と、限界費用曲線は供給曲線と
それぞれ同じです。したがってこれは需要曲線と供給曲線が
交わるところでパイが最大化されるということになります。
すなわち市場均衡でパイは最大化されるということになります。
補足3
デッドウェイト・ロスを知ることで、
課税はただ誰かからとってきて誰かにあげる、プラスマイナスゼロ
というわけではないことがわかったとおもいます。
これは直観ではわかりにくいところなのでとても重要です。
◆参考文献
Steven E. Landsburg, PRICE THEORY AND APPLICATIONS
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