補助金の弊害


いま納豆が体にいいというので政府が消費者に 補助金(subsidy)を出すことにしたとしましょう。 消費者は1単位購入するごとに政府から1ドルをもらえます。

補助金の納豆マーケットへの影響を考えましょう。 これは消費者の需要を「刺激する」とおもわれます。 なぜならこれは納豆のパックに1ドルのおまけがついてくるのと 同じだからです。 消費者にとっては納豆1単位の価値(評価)が1ドル 上がることになります。 したがってこれはもとの限界評価曲線(需要曲線)が1ドルだけ上にシフトすることを意味します。 これは課税の逆と考えればわかるとおもいます。

ではこの補助金は望ましいことでしょうか? これは全体のパイ(社会的余剰)が大きくなっているか小さくなっているかを 調べればわかります。

いま下の図で S は供給曲線、 D はもとの需要曲線、 D' はシフト後の需要曲線です。 また Ps は新しい市場価格(生産者にとっての価格)、 Pd は消費者にとっての価格です。ここで Ps - 1 = Pd に注意してください。 Q はもとの取引数量、 Q' は新しい取引数量です。

まずもとの社会的余剰を求めます。 これは A + C + F + H です。

つぎに補助金を交付したときの社会的余剰を求めます。これは

消費者余剰: A + C + F + G  と
生産者余剰: C + D + F + H

の和から

納税者にかかるコスト (Ps-Pd)*Q': C + D + E + F + G

を差し引いたものです。 消費者余剰の F, G と生産者余剰の C, D がキャンセルされるので、 これは A + C + F + H - E になります。

けっきょく社会的余剰は E だけ減っていることになります。 E はやはりデッドウェイト・ロスとよばれます。 これは過剰に生産されたための非効率です。

こうして補助金はよくないことであることがわかります。


◆参考文献
Steven E. Landsburg, PRICE THEORY AND APPLICATIONS