価格統制の弊害


いまミネラルウォーターが1単位1000円するのは高すぎるといって 政府が消費者保護のために1単位500円を超えて販売するのを違法であるとしたとしましょう。政府が価格の上限を決める(Price Ceiling)のですね。

Price Ceiling によってミネラルウォーターの価格は1単位500円になります。 さてこれはミネラルウォーターを大量に消費する都会人たちにとってはめでたい ことでしょうか?答えはNOです。

いまミネラルウォーターの需要と供給は下のグラフで表されます。

Price Ceiling の前後で社会的余剰を計算してみましょう。 まず Price Ceiling 前の社会的余剰は A + B + C + D + E + F です。 Price Ceiling 後の社会的余剰はどうなるでしょう。

まず生産者余剰を求めます。 いま価格が500円なので供給量はQaです。 マーケットに出回っている量がQaなので 消費者の入手できる量はQaのはずです。 したがって取引数量はQaになります。 そこで生産者余剰は F になります。

つぎに消費者余剰を求めます。 いま消費者にとっての実際の価格(コスト)はいくらでしょうか? これはけっして500円ではありません。1500円です。 1500円だからこそ需要量がQaとなって供給量と一致しマーケットはクリアされます。

実際の価格1500円と店で支払う価格500円の差1000円の意味はこうです。

まずある消費者ごっちん マキ は 深夜の1時すぎにコンビニに行ってミネラルウォーターがないことを発見します。 店員に問い合わせると深夜0時に50本入荷していたが 速攻で売り切れたとのこと。 翌日ごっちんは0時前にコンビニに行きます。 しかしそこで見たのは20人以上の行列でした。 ごっちんはまたもミネラルウォーターを買うことができませんでした。 ごっちんは翌日少し離れたディスカウントストア に朝から出かけます。 そこもやはり行列ができていましたが なんとかミネラルウォーターを購入できました。

つまり店を探したり行列に並んだりするコストです。 500円では需要量(Qc)が供給量(Qa)をはるかに上回り、 入手するための競争が激しくなります。 そこで他の努力が必要になってきます。 これが1単位当たり1000円ということです。 1単位当たり1000円コストがプラスされ 実際の価格が1500円になってはじめて 需要量がQaになりバランスがとれます。

したがって消費者余剰は A になります。

以上より社会的余剰は A + F になることがわかります。 こうして Price Ceiling により全体のパイは B + C + D + E だけ減る ことがわかります。

社会的余剰の減少分 B + C + D + E はやはりデッドウェイトロスとよばれます。 C + E が過少生産による損失、 B + D がサーチや行列による損失 です。


◆参考文献
Steven E. Landsburg, PRICE THEORY AND APPLICATIONS