コースの定理4


今回はこれまでの話を整理する意味で 別の例をとりあげます。

いま鉄道から出る火花がときどき近隣の 農作物に火をつけて台無しにしてしまうとしましょう。 もし鉄道会社に責任がないのなら、 鉄道会社はまったくこの外部性を気にせず 列車の本数を減らすことをしないでしょう。 そこで政府が出てきてピグー税を課します。 鉄道会社は本数を減らし、税収は農家の補償にあてられ、 めでたしめでたしとなります。

しかしコースはこれを批判します。 もし取引費用がかからなければ、交渉(謝礼など)によって 列車の本数を減らすことができて、同じ結果になるからです。 政府の介入は必ずしもいりません。

コースは取引費用がある場合でも、 ピグー税は不必要、それどころか有害かもしれないと指摘しました。

もし農家がすごく安い費用(たとえば100ドル)で 農作物を火花のかからない場所に移動できる としたらどうでしょう。 この場合、鉄道会社が列車の本数を減らして 莫大な収入(たとえば100万ドル)を失うのは 馬鹿げています。 しかしピグー税は農家にそういう簡単なことをする インセンティブを与えないのです。


◆参考文献
Steven E. Landsburg, PRICE THEORY AND APPLICATIONS
David D. Friedman, LAW'S ORDER
ロナルド・H・コース『企業・市場・法』