今回はこれまでの話を整理する意味で
別の例をとりあげます。
いま鉄道から出る火花がときどき近隣の
農作物に火をつけて台無しにしてしまうとしましょう。
もし鉄道会社に責任がないのなら、
鉄道会社はまったくこの外部性を気にせず
列車の本数を減らすことをしないでしょう。
そこで政府が出てきてピグー税を課します。
鉄道会社は本数を減らし、税収は農家の補償にあてられ、
めでたしめでたしとなります。
しかしコースはこれを批判します。
もし取引費用がかからなければ、交渉(謝礼など)によって
列車の本数を減らすことができて、同じ結果になるからです。
政府の介入は必ずしもいりません。
コースは取引費用がある場合でも、
ピグー税は不必要、それどころか有害かもしれないと指摘しました。
もし農家がすごく安い費用(たとえば100ドル)で
農作物を火花のかからない場所に移動できる
としたらどうでしょう。
この場合、鉄道会社が列車の本数を減らして
莫大な収入(たとえば100万ドル)を失うのは
馬鹿げています。
しかしピグー税は農家にそういう簡単なことをする
インセンティブを与えないのです。
◆参考文献
Steven E. Landsburg, PRICE THEORY AND APPLICATIONS
David D. Friedman, LAW'S ORDER
ロナルド・H・コース『企業・市場・法』
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