英国式オークション


オークションで最も親しまれているのは英国式オークションです。 口頭で価格を上げていき、最高価格を提示した参加者が落札します。

英国式オークションの正しい戦略は 「自分の評価額まで入札し、それを超えたらあきらめる」です。

このことを示す最も簡単なモデルは次のようなものになります。


久しぶりにリカとマリがお宝チケットを争っています。 リカはこのチケットに5万4000円まで払っていいと考えていて、 マリは3万4000円まで払っていいと考えています。 そしてお互いにこのことを知っています。

リカ VS マリ

オークションは「修正英国式」で行われます。 これはオークショニアが1万円から1万円ずつ価格を上げていきます。 そしてリカとマリはオークショニアが価格をコールするたびに、 「受け入れるか、拒否するか」を(同時に)決めます。 一方だけが受け入れたとき、オークションは終了し、 その価格でチケットは落札されます。

これは無限・動学ゲームであり、 ゲームの最初の部分は下のようなツリーで表されます。 (支払い意思額−価格=余剰が利得になります。同時に拒否した場合は、ともに何も得られず、利得は0になるとします。点線で結んだものは情報集合です。)

このゲームで戦略というのは、 「それぞれの価格で受け入れるか拒否するかを定めた計画」のことです。 たとえば戦略の一つは、受け入れるを○、拒否するを×で書くとすると、

(1万円, 2万円, 3万円, 4万円, 5万円, . . .)=(○, ○, ×, ×, ×, . . .)

といったものになります。

▼リカの戦略を考えましょう。 リカはsubgame5以前では常に受け入れるのが合理的になりますが、subgame6以降では常に拒否するのが合理的になります。

たとえば5万円のラウンドのとき、 受け入れれば利得4000円または次のラウンドでの利得0が確定します。 (理由は次のパラグラフ)。 しかし拒否すれば利得0が確定してしまいます。 (1〜4万円のラウンドについても同じように考えられます。)

6万円のラウンドのときは、 受け入れれば利得-6000円または(次のラウンド以降での)利得0以下が確定してしまいます。 しかし拒否すれば利得0が確定します。 (7万円以降のラウンドについても同じように考えられます。)

つまり

(1万円, 2万円, 3万円, 4万円, 5万円, 6万円, 7万円, . ..) =(○, ○, ○, ○, ○, ×, ×,...)

がリカの唯一正しい戦略となります。

同様に考え、

(1万円, 2万円, 3万円, 4万円, 5万円, 6万円, 7万円, . ..) =(○, ○, ○, ×, ×, ×, ×,...)

がマリの唯一正しい戦略となります。

(ゲームはリカが4万円で落札し終了します。)


◆参考文献

  • GAME THEORY WITH ECONOMIC APPLICATIONS 
    Scott Bierman, Luis Fernandez, Addison-Wesley, 1998