4. クレジットの発想


【定理2】
いま、小役払出率 k が ks-1 < k ≦ ks (ただし s = 2, 3, …, 6 ) ならば、 そのプレイは設定 s 以上の判別プレイである。

これを使って作られたのが「旧設定判別法」です。 小役払出率が2つの設定の理論上の払出率の間に入るような投入枚数と払出枚数の組合せをあらかじめ求め、表にしておきます。

プレイ数を X 、払出枚数を N とし、 (X, N) = (6,7), (7,8), (12,14), (13,15), (14,16), ・・・ のような表を作り、ホールへ持っていきます。 そして6プレイ目までに7枚の払出があれば6プレイ目は判別プレイ、 7プレイ目までに8枚の払出があれば7プレイ目は判別プレイ、・・・。 プレイ数を数えるぐらいならまあどうにかなるでしょう。 払出枚数は50枚までならクレジットを使えば何とかなります。

しかし、これは大変にコストがかかるものでした。 まずパチスロそのものを楽しめません。 プレイ数を数えるのは相当慎重にやらないといけません。 リプレイを数えてはいけなかったりしていろいろと大変です。 払出枚数が50枚をこえるとさらにやっかいです。 クレジットがオーバーする前に、クレジットを落としていかないといけません。 プレイ数と累積の払出枚数を監視しないといけないので、 これはちょっと特殊な能力が必要です。 ひどく神経を使います。 とにかく混乱するのが必至です。 そして、ここが重要なのですが、 うまく数えられたとしても、判別プレイがおもったようにこないのです。 判別法は日の目を見ませんでした。 あまりにも大変だったからです。

「旧判別法」はよい計算方法がないだけでした。 何か専用の機械を作れば、これらの計算をやってくれそうです。 しかし機械をつくったり買ったり実際使ったりすること自体がコストになります。 なんとかならないものでしょうか。


「クレジットのうまい使い方がある」。 『パチスロマガジン』誌の提案した方法は画期的でした。 しかし、クレジットをうまく利用できないかということは新しい話ではありません。 クレジットを利用するというのは必然性があることでした。 ただ、どういうふうに使えばよいのかがわかりませんでした。

「払い出された分だけをクレジットから入れればよい」。 コロンブスの卵でした。 旧判別法では、クレジットは払出枚数の監視専用 になっていました。そしてコインを必ず手で入れるのでした。 だからクレジットから入れるということは、判別に関する限り、逆転の発想でした。

いったいどういうことなのでしょう。 旧判別法ではクレジットが増えるというのが大きな問題でしたから、 クレジットから入れてクレジットを減らすというのは、まあ必然性がなくもありません。

どのようにクレジットから入れるのでしょう。 「出てきた分だけをクレジットから入れればよい。そうすればクレジットは増えも減りもしない」。

あたりまえです。 毎月給料分だけをきっちり使っていれば、貯金は増えもしませんし、減りもしません。 つまりクレジットが増えた分だけ、クレジットを減らすということです。 払出がクレジットに入る限り、クレジットが増えた分というのは、払出枚数に等しいです。

「じゃあ、あらかじめクレジットから入れる枚数を決めておけばどうだろう。BIG終了後、カウンタ値が0のときに、クレジットを30にしておこう。そして6プレイ目までに7枚入れると決めておこう。そしてもし6プレイ目にクレジットが30になっていたら、それは 7枚の払出があったということだ。ということはこれは判別プレイだ。」

そうなのです。


CR = 30 としておきましょう。そして (プレイ数、CR投入枚数) = (X, N') = (6,7), (7,8), (12,14), (13,15), (14,16), ・・・ のように投入していくのです。上と同様の理由から、 これらのプレイ数で、CR = 30 になったときは、それらは判別プレイになります。 あらかじめ定めておいたクレジットをいつも基準にするのです。

ところが、この数列をどんどん増やしていきましょう。  (X, N') = ・・・, (14,16), (18,21), (19,22) , (20,23), (21,24), (24,28), (25,29), (26,30), (27,31), (28,32), ・・・ あるプレイ数以降では、 必ず判別プレイになります。

CRからの累積投入率が、  r = {7/18, 8/21, 14/36, 15/39, 16/42, ・・・} = {0.3889, 0.3810, 0.3889, 0.3846, 0.3810, ・・・} この数列は 0.3889 をこえずに、 0.3889 に近づいていきます。あるプレイを過ぎると、 CR投入率は、2つの設定の払出率の間に収束します。

一方、もとのクレジットになったときは、投入率が払出率に等しくなります*。 したがって、もとのクレジットになったときは、払出率が 2つの設定の払出率の間になるということです。 よってもとのクレジットになったプレイは必ず 判別プレイです。

次回は今回の議論の定式化です。


*・・・ 投入枚数を M とします。そして、クレジットから rM だけ投入します。 クレジットがもともとのクレジットになったのは、 rM だけ払出があったからです。 そこで 払出率= rM / M =投入率 です。

ところで、 6プレイ目までにクレジットから7枚だけ入れる、とかいうのはどういうことでしょう。 「同じプレイで手からもクレジットからも入れる」。 この方法も驚きでした。だってふつう、同じプレイではどっちかしか使いません。 両方から入れるのはクレジットが1か2になったときぐらいです。

5. 判別法 へ