収入等価定理


前回までに英国式オークションとオランダ式オークションを説明しました。 またゲーム理論基本編ではファーストプライス・オークションを説明しました。 (これら3つは、やり方が異なるだけで、登場人物や評価額は同じだったことに注意してください。)

さてこれら3つのモデルを比較して何か気付くことはないでしょうか?

すべてのオークションで最も評価額の高いリカが落札しました。確かにそうです。 でももっと興味深い点があります。それは落札額がすべてのオークションで同じ(4万円)だということです。

3つのモデルは計算の簡略化のために、価格(入札額)を1万円刻みにしましたが、 これを10円、1円単位まで刻んでいくと、落札額の4万円というのは マリの評価額である3万4000円に近づきます。

つまりこれら3つのオークションに共通するのは

(最も評価額が高い者が)次に評価額の高い者の評価額で落札する

ということです。

じつはこれはセカンドプライス・オークションでも成り立ちます。このモデルでは簡単化のために評価額も1万円単位にしましたが、 上の3つのオークションと評価額を同じにして、入札額を細かく刻めば、やはり 落札額はマリの評価額である3万4000円に近づきます。 (自分の評価額をそのまま書くのがセカンドプライス・オークションのポイントでした。)

この結果は収入等価定理 (Revenue Equivalence Theorem) として知られます。(売り手の立場からすると、どの方式でも得られる収入は同じ3万4000円です。)


紹介した4つのモデルでは、オークションの参加者は2人だけで、またお互いに評価額を知っています。これは現実のオークションとは異なります。 しかし驚いたことに、オークションの参加者が何人に増えても、またお互いに評価額を知らなくても、この収入等価定理は成り立つのです。

売り手は英国式、オランダ式、ファーストプライス、セカンドプライス のどのオークションがベストだろうかと考えます。

経済理論はこう言います。

「どのオークションもベストである」。

収入等価定理は経済学の最も重要な成果の一つです。


◆参考文献

  • GAME THEORY WITH ECONOMIC APPLICATIONS 
    Scott Bierman, Luis Fernandez, Addison-Wesley, 1998